山と旅と自転車と

自転車や山スキー、ハイキングなどを地図と共に記録

SR600紀伊山地

SR600紀伊山地を完走しました。

概要

SR600とは

SRとはシューペル・ランドネ(Super Randonnées)のことである。SR600とは、距離は600km、累積標高は10000m以上になる山岳ルートで、パーマネント(permanent)、すなわち決められた日程ではなく、いつでも(道路の通行可能なときであれば)チャレンジできるブルベのことである(参:Super Randonnée | Audax Japan)。SR600にはランドヌール部門とツーリスト部門があり、今回私は、より条件の厳しいランドヌール部門(制限時間60時間)で参加した。
SR600紀伊山地は、オダックス近畿のSR600で、今年、新たに誕生したルートだ。ただ、ルートの一部になっている高野龍神スカイラインの開通が3月25日であることから、まさに始まったばかりのSR600(Audax Kinki SR600)である。ちなみに情報によると、25日の道路開通にあわせるように23日出発した人が2人。そして25日出発は、私と元プロロードレーサー三船雅彦氏(SR600紀伊山地 - 三船雅彦ブログ「MASSA'S EYE」)。私が8時出発で三船氏がブログによると9時出発。ということは私が3番目なのだが、初日昼頃丹生都比売神社の登りでアッサリと追い越されてしまったので、ゴールは私が4番目、ということだった。

準備

今回、これまで誰も走ったことがないSR600なので、何の情報も無いままだった。もちろん、それぞれの部分は多くのランドヌールが記録を残しているので、ネット上の記事を参考に計画を立てようと考えていたが、いかんせん準備に時間が無かった。もっとも人家がないところが100km続くわけでもなく、いざというときは大きな河川や海側に下っていけば、それなりに何とかなるだろうと考えることもできた。
とはいうものの、宿の予約、食事の場所、などは考えておいた方が良いだろう。ということで、宿は深く考えずに新宮と龍神として、楽天トラベルで安宿を見つけた。ただ食事場所の情報は少なすぎた。しっかり調べればそれなりの情報があったのかも知れないが、食堂の定休日や営業時間などは、ほとんどのところが良くわからないままだった。ちなみに23日出発で、知人でありグルメライダーとして知られる米沢氏はかなり綿密に調べて記録も残してるのでご参考に。
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ただ準備不足ではあったが、逆に何とでもなるようにと、常にスニッカーズや洋羹などの携行非常食を数個ずつと、時にはおにぎりを大きめのウェストバッグに入れて走っていた。
次に装備だが、いつもの600kmブルベと基本は同じ。昨年よりタイヤ幅を28mmにしていて、これは大正解だった。一部だが、かなり荒れた道があり、マウンテンバイクで走りたいな、と思うほどだったからだ。フロントバッグには雨具、サドルバッグには輪行袋と工具類・替えチューブ2本・防寒具・替え手袋・空気入れなど。トップチューブバッグには電池と携帯工具。ウェストバッグにはキューシートとコマ図・非常食類・財布・スマホ・カメラ・ワイヤー錠・薬サプリメント類・キネシオテープ、それにボトルケージには水ボトルとスポーツドリンク用ボトル。ヘッドライト2本(ボルト400)、GPSはetrex30と30xの2台(30が一度壊れたため、万が一に備えて3年ほど前から)、その隙間にキューシートの抜粋に時間や標高グラフやメモを書き込んだシートをビニール袋に入れてマジックテープで取り付け。リアはオムニ3とオムニ5。ヘルメットにはフロントライトとリアライトをいずれもマジックテープで固定。
ウェア類は次の通り。トップスは、内側から順に、1.メリノウールの下着・2.ヒートテックシャツ・3.起毛長袖ジャージ・4.ダウンベスト・5.ドライテック?レインウェア。もちろん一番上は反射ベスト。1と3は着たきりで、それ以外は状況に応じて着脱していた。2は滋賀の家を出るときかなり寒かったので着ていたが、走り出してすぐに脱ぎ、その後着ることはなかった。ボトムスは、いわゆるレーサーパンツにパッド無し厳冬期用タイツを重ね着。少々暑いときもあったが、耐えられないほどではなく、むしろ寒さ対策としてこれくらいで良かった。足元は、ハイソックスに自転車用シューズ・レインシューズカバー。手は、薄いウール手袋に防寒テムレス・替え用にフルフィンガーのグローブ。頭はヘルメットの下に防寒用キャップ。このような出で立ちだった。紀伊半島とはいえ、3月で山間部では雪が降ることも考えられ、それに見合ったウェアをチョイスした。暑いときには脱いでサドルバッグに入れるようにしていた。

3月25日

朝イチの電車に乗り、出発地点のりんくうタウンについたのは7時過ぎ。車内で食事をしようと思っておにぎりなどを持って乗ったのだが、朝イチとはいえ関空快速は満員。そこで食事する勇気はなかった。大阪までの快速の中で食べるべきだったと、反省。
りんくうタウン駅を出て自転車を組み立て、PC1出発地点のセブンイレブンりんくう松原店に向かう。ここでスポーツ飲料などを購入し、屋外で食事。

そして出発は7:50。泉佐野市街から郊外に向かう。良い天気だ。結構気温も上がってくる。走り出してすぐに、ヒートテックやダウンベストなどを脱いでサドルバッグに。そして葛城山を目指す。犬鳴山温泉から山道に入る。一瞬コースを誤るが、すぐに修正。この上り坂は結構な勾配だ。正確には知らないが、おそらくこのルートの中で一番勾配が厳しいのではないだろうか。

PC2葛城山到着は10:18。
ここから急勾配を下るが、途中天空の村を通過。

眼下に紀ノ川を望み、駆け下りる。
紀ノ川を渡り、川沿いの道を東へ進み、やがて丹生都比売神社への登りに。この登りで後ろから声が。「何時到着予定ですか?」変な質問だと思った。普通ならどこまで行くかを聞くはずだが・・・。すぐに合点がいった。同じ日にSR600に参加している三船さんだ。とっさのことなので「今日中に新宮まで」と応えると、「がんばって下さい」と言うと三船氏はすぅーっと追い抜いていった。結構軽装だな、と思った。自信があるからだろうな。こちらは自信がないので、あれやこれやで重くなり、さらにスピードが下がり、ということで、このあたりのことはなかなか難しい。

PC3丹生都比売神社到着は11:56。ゆっくり見学したいと思いつつ、そんな時間は残っていないので、鳥居の写真を撮り、そそくさと出発。
紀ノ川沿いの道に戻り、九度山から橋本。清水のコンビニで昼食。紀ノ川沿いにはいくつかのコンビニがあり食事には困らない。さらに、五条へ向かう。このあたりはブルベで何度もたどった道、快走する。やがて奈良時代の国宝、栄山寺八角堂、は見学していないが手持ちの資料映像を載せておこう。

そして、五條のモンベルはPC4で13:53。

そして下市から吉野へ向かう。急坂をあえぎ、金峯山寺

さらに登り、コウヤマキの群落がPC5で15:06。


吉野山をくだり、いよいよ紀伊山地の核心部に。吉野川を溯り大滝ダムから川上村の道の駅杉の湯川上で休憩を、と思っていたが、この部分は工事中で迂回路を通る。ガードマンのオッチャンに、「ピンクの服着た人、1時間ほど前先行ったで。もう一人来るからって、ゆうとったん、あんたのことか」と。三船さんがもう一人来ると言っていたようだ。休憩は無しで、大迫ダムからループ橋、新伯母峯トンネルを抜け、北山川に。少し暗くなってきた山の上の方に目をやると積雪があった。一気に下るが少し寒くなってきた。
上北山村河合にはヤマザキショップがあり、夕方までなら開いていて食料は買えそうである。また隣の食堂も開いていた。が、もう少し先で食事、と思ってここでは立ち止まらず下北山へ。きなりの湯にレストランがあるとのことで入るが、良くわからない。結局入口付近にある「JAならけんショップしもきた」で弁当を購入。18:50。ちなみにこの店は19:00までとのこと。ギリギリセーフ。なお、少し手前にはヤマザキショップがある。すっかり暗くなり、寒くなったのでダウンベストなどを着込む。このあたりは川の流れもすごく蛇行していて、どこにいるのか良くわからないままPC6七色ダムへ。ここで20:23。

七色ダムから、PC7丸山千枚田。標識の前で写真とのことだが、暗闇の中、どこに標識があるのかわからない。しかも下り坂。通り過ぎて戻りたくはない。少し戻ったりもしたが、慎重に坂道を下ると、標識は突如現れた。到着は21:38。

残念ながら千枚田の景色はほとんどわからない。またの機会にしよう。
ここで雨が降ってきた。スマホで確認すると。本格的なもののようだ。もう少しなのにと思いながらも、トンネルで雨具を着込んで、新宮へ向かう。
PC8速玉大社到着は23:08。雨で写真がピンボケだ。

そして新宮サンシャインホテル。自転車を室内に持ち込むことができた。シャワーを浴び、スマホで天気などを確認し、就寝は12時過ぎ。

3月26日

朝は、5:00起床。本来朝食付であったが、それをキャンセルして、少しでも早く出発しようと思っていたが、雨。スマホで雨雲を確認すると、しばらくすると抜けていきそう。
しばらく待とう、との判断。食堂は少し早く開店。バイキングでたっぷり食べてから出発。出発は6:38。まだ雨は降っている。
新宮市街にはもちろんコンビニや「すきや」などもあり、食事には困らないだろう。当初はそのような計画であったが、先を進む。
那智の山登りにさしかかる頃から、小雨となってきた。

8:13、PC9那智大社参道到着。この石段を上がる元気はないので先に進もう。
しばらくすると、予報通り雨が上がってきた。
那智の滝が美しい。

[遠くに那智の滝青岸渡寺の朱塗りの三重塔]

[妙法山から太平洋]
妙法山からしばらく進み、熊野川町への道が、今回の一番の悪路。雨上がりの道は、舗装はされているが狭く、落ち葉と枯枝が散乱し、大きな穴があちこちに。そして当然ガードレールもない。これが下り坂なので、当初の予定を大きく狂わせた。時間と体力を消費し熊野川町能城山本の食堂に駆け込んだのは12:07。「はせひら食堂」はルートから少し外れるところで、地元の人向けのいわゆる「めしや」。セルフ方式でケースから出して食べるやり方であった。日曜は定休とのことなので要注意。

「はせひら食堂」をあとにして、瀞峡の脇を通り北山川を溯る。

そしていよいよ玉置山ヘ、というところで、迂回路の看板。

最初、地図が頭に入っていなかったので、迂回路の十津川への道はもっと先のことで、玉置山ヘは描いていないが手前に山道があって、そこに登るのだと思い込んで、通行止めの道を少し進む。がやはりそこは通行止め。大きな崖崩れがあった。元来た道を戻り、看板通りトンネルを越え十津川方面へ向かうと、それは玉置山ヘの道であった。
この道が急登であることは織り込み済みだったので、無理しないようにゆっくり登る。先の下り坂や昨日からの疲れがたまっているので、結構厳しいものはあったが、冷静に判断して激坂というほどではないのでは、とも思ったりした。ただそのような道を1000m程登るのだから、簡単ではない。特に頂上付近で一度緩やかになってから、再び急登で200m程登る。油断してしまっていただけに、ここが一番厳しい登りとなった。登り切った後、少し下ってPC10奥駈道の石碑。16:10。


[十津川方面、重畳とした山なみが遙かに続く]


[十津川]
玉置山を下ると十津川温泉。このあたりはあまり調べていなかったが、なにがしかの店はありそうだ。
今日はどこにも立ち寄らず、本宮を目指す。本宮へは立派なバイパスができており、一気に進む。
県境を越えてルートを少し外れ、北に向かうと「道の駅熊野ほんぐう」。食堂は終了していたが、店舗で弁当を買い、食堂内で夕食。17:46。

ついでに明日の朝食のおにぎりも購入。夕方は、半額セール。
道を戻り、本宮へ。PC11は本宮大社。18:31。

ここで龍神の宿に遅くなるとの連絡を入れる。
本宮から中辺路を西に。現代の中辺路・国道311号線は交通量も少なく快適に進む。やがてPC12近露王子跡
場所に到達はしたが、写真を撮るべき看板がよくわからない。これでいいのかなと撮った写真が次の一枚。20:14。

中辺路をもうしばらく進み、中辺路町川合から国道371号、そして内井川沿いの道を溯る。狭い道であるが、険悪というわけではないなぁ、と思っていると突如、「ワン!」と肝を冷やすほどの大きな声。犬が駆け寄ってきたのだ。全力で走るが、しばらく併走。やがて下り坂でヤツを振り切る。どうやら放し飼いの飼い犬らしい。こういうのはやめてもらいたい。気を取り直して、坂を下りきり、水上栃谷トンネルを越え、そして龍神へはゆるやかな登り。龍神温泉到着は23:30。宿は坂井屋旅館。どうやら宿泊客は私ひとりか?。自転車は玄関の土間に置かせてもらえた。内湯に入り就寝。

3月27日

いよいよ最終日。
朝は5時半頃起床。昨日購入していたおにぎり2個を頬張り、出発は、6:25。
女将によると、昨日は山の上ではみぞれが降っていたとのこと。「お気をつけて」と送り出していただいた。
そういや、龍神温泉の写真を写してないのでパチリ。

あまり意味のない写真だが・・・。
そして高野龍神スカイラインへ。

[看板の左上にチョロッと見えているのが恋小袖の瀧]
風景はいいのだが、いざ写真という場所が見つからず、キョロキョロしながら徐々に高度を上げていく。PC13ごまさんスカイタワー到着は8:57。今回の最高地点、GPSによると1289m。

結構お腹がすいてきた。でもこの時間では店は開いていない。おにぎり2個ではやはり物足りなかった。非常食「スニッカーズ」を食べる。

スカイラインが彼方に延びる]
空腹のまま、次へ進む。スカイラインかをどんどん下り、箕峠から野迫川村へ。PC14熊野参詣道小辺路標識到着は9:59。

ここで食べ物が何かあるかなと思ったが、見当たらなかった。バス停があったので、そこで休憩し、最後の非常食「1本満足」を食べる。さらに、スポーツ飲料がなくなっていることに気がついた。自販機で購入と思って近づいてみると、「売り切れ」の小さな赤い文字が。ショックだった。周辺にそれらしきものは見当たらない。水は売っていたが160円は高い。まだ少しはあるので、高野山まで行けるでしょう、と判断。しかしこれは誤りであった。しばらく進むと結構アップダウンがある。水もほぼなくなってしまった。さらに、気温が上がり暑くなってきた。そこからは、沢の水で汲めそうなところを探しながら進む。そして北股川沿い756m(GPSによる)付近に手を伸ばせば届くところに水が流れていた。11:03。冷たい水は熱くなった体を冷やし、ほっと一息。ボトルに水を汲み出発する。
ルートは再び高野龍神スカイラインに戻り、程なくすると高野山へ。PC15は金剛峯寺。12:26

以下は、手持ちの資料映像(今回は立ち寄っていない)

[根本大塔]
あてにしていた食堂は、どうやら休みのようだ。探したり考えたりするのは面倒なので、檀上伽藍周辺のファミリーマート高野山店。テラスもあり快適だ。

[大門、高野山の入口だが、今日は出口]
そして高野西街道をダウンヒル。花坂の焼き餅はスルーして、ひたすら西に向かう。かつらぎ町新城から紀美野町紀美野町は私の生まれた地。まぁ、3歳までしかいなかったので、詳しいことは何も知らないが、もちろん親戚も何軒かあるが、それらもスルー。そして海南。琴の浦の温山荘を右に見てマリーナシティへ。

[資料映像、温山荘の海岸]
PC到着は、15:14。

[マリーナシティホテル]

[サンブリッジから]

和歌浦 不老橋]
和歌山市内を通り抜け、紀ノ川を渡り、加太へと進む。加太で何かないかとうろうろ探すが、これまた適当なところが見当たらず。
そして最後のPC17休暇村紀州加太到着は16:59。


あとは泉南の道をひたすらりんくうタウンへ。カラフルな観覧車が見えたら間もなくりんくうタウン
ゴールのコンビニ到着は、18:59。残り1時間を切るギリギリ隊として、任務終了。

最後に

おそらく、これからこのルートをたどろうという人が、この記事を読むことがあると思いますが、少し注意したい点を記しておきたいと思います。食糧の調達、これが一番重要だと感じました。四国などはもっと困難だと言いますが、こちらもなかなか大変な部分があります。食堂や商店の場所と営業時間や休業日はしっかり調べておいた方が良いと思います。それから、このような山岳コースは当然のことですが、寒暖差への配慮です。私はかなり防寒具を持っていたので大して問題はありませんでしたが、一方で重量の問題もあります。ヒルクライムは軽量な程よいわけですので、そこらあたりの読みが重要だと思いました。
なかなかバラエティに富んだルートを辿ることができました。面白い3日間でした。一方、もう少し計画的で速ければ、それぞれの聖地もしっかり巡礼できたのにと、少し残念でもありました。
最後に、このコースを考案され、提供していただいた皆様に感謝申し上げます。