山と旅と自転車と

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御嶽鈴ガ沢

鈴ガ沢東股遡行中股下降

 今回の沢は、フェルトソールを張り替えた沢靴がいかに威力を発揮するか、ということがボクにとって大きなポイントであった。製品名は忘れたが、山の店ではなく釣具店で入手した1000円ちょっとのボンド・サンドペーパー付フェルト張替セットであった。元のフェルトを剥がすのではなく、それをカッターやヤスリで削って平らにならしてから新しいフェルトを接着し、余った部分を切り取り整形する、という代物であった。フェルトを削る作業は案外手間取るもので、完全に平らにできないまま、新しいフェルトを接着した。これが剥がれないかどうかが、当初もっとも大きな関心事であった。

 さて、鈴ヶ沢はナメが美しく、登攀要素はあまり大きくない沢である。リニューアルされた靴にとって恰好の沢だと思った。歩き始めてしばらくして、小石をコンクリートで固めたようなナメが現れた。溶岩流の名残であろうか。フェルトが新しい割にはけっこう滑るモンだと思ったが、他のメンバーもツルツルしていたので、これは仕方がないかな、と思った。また新なフェルトの厚みが加わったので、若干バランスが悪いのかな、とも思っていた。20メートルの直瀑の巻道は心配したが、案外簡単に抜けられた。しかしその後いやに足元がおぼつかないと思いながら進む。途中、トイ状の滝の脇を登っているときであった。足元がツルンと滑ってウォータースライダーに。若干水を飲んだが大事に至らず、一安心。パーティのメンバーには少し心配をかけてしまった。

 その後、少しアブナそうなところ(恐らく通常はそうではないと思うが)ではI野さんにロープを出してもらい、へっぴり腰姿で通過していった。そして無事沢を登り切った。といいたいところであるが、じつはもう一度ヒヤッとした場面があったことは、他のメンバーには気づかれていないかもしれない。かなり傾斜の緩い滝の脇を登っているときであった。誰も滑るとは思っていないのでロープは出されていない。そこでツルンとやってしまったのだ。幸い、すぐさま膝当てにしているバレーボール用のサポーターが十分フリクションを発揮して、その膝で止まったのである。サポーターをほめてやりたい、というかこのフェルトはそれ以下なのであった。

 そんなヒヤヒヤな場面を何とかやり過ごし、東俣を登り切る。稜線は御嶽の中腹である。何度か山スキーで訪れたところは間近であった。夏のようすは初めてである。こんなに樹影が濃かったかな、などと思いながら展望を楽しむ。下降に使った中俣はゴーロが多い沢である。相変わらずツルツル滑りながらも、無事に下山できた。

 後日談。くだんのフェルトしっかり付いていたが、つま先部分は約1/3位にすり減っていた。たった1日で半分以下になっていたのである、そしてやけに土が目に詰まっていた。つまりボンドの心配は杞憂に終わったが、フェルトの目が粗く、土やヌルゴケなどが付きやすい構造になっていたのではないかと考えられる。あくまでも素人判断であるが。ただ、忠実に三点支持を行っていれば、スリップしても落ちることはない。さらなる言い訳になってしまうが、数ヶ月前からが痛くて、手を挙げるのに若干不自由を感じていたのである。医者に行くと五十肩と、軽微な頸椎椎間板ヘルニアだそうだ。ショックであった。今年になって、体力の衰えもあり、いろいろなトレーニングを始めたところであった。これが引き金になった可能性があるとのこと。いきなりの無理は禁物だということを思い知った。これからしばらくリハビリである。そしてこんな状況であったにもかかわらず、沢に出かけたことを反省し、サポートしていただいたメンバーに感謝する。